"luschel"カテゴリーの記事一覧
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初めて出会ったのは、俺がまだ8歳の時。
向こうは4つ下で、従妹のララと同い年の女の子だった。
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俺の家は代々魔法騎士を受け継ぐ家。
俺もロードナイト家の長男だし、父に跡継ぎだと期待されてる。
そう、俺も魔法騎士になる。
魔法騎士たるもの、体は鍛えないといけないし、
勇気を持ち、怖いものがあってもならない。
主君を・・・守るべきもののために体を張る!!
父にはそうやって教わってきた。
俺は父をすごく尊敬してる。
そりゃ、仕事ばかりで遊んでもらってない記憶の方が正直多いけど。
仕事場での父を母と見学しに行った時、あまりのかっこよさに俺もああなりたいと思ったし、
なるんだと思った。
俺は将来魔法騎士になるんだ。
だから家の裏の森の探検なんて一人でへっちゃらだし、
俺はなんでも倒せるんだ。そんな気持ちでいた。
いつものように、
お気に入りの木の棒を腰に差して魔法騎士になりきったつもりで森の中を歩いていた。
「あなただぁれ~?」
ふいに声をかけられる。
「・・・?」
振り返ったが姿がない。
俺は気のせいだと思い、再び歩き初めた。
「きこえてないのかな?おーい!」
やっぱり声が聞こえる。
俺は再び振り返るが、誰もいない。
「へんだな?」
「上!!上だよ~~!」
上から声が聞こえる。
そちらの方に顔を向けると俺より年下の女の子がいた。
「何やってんだ、おまえ!」
「えへへ、降りれなくなっちゃった」
顔は逆光のせいかよく見えない。
「助けてやるからちょっと待ってろ」
近くにこれぐらいの木で使えるはしごがあったはず・・・!
急いではしごを持ってきて木に立てかけた。
女の子は俺の指示通り、はしごを伝って降りてくる。
「大丈夫だったか?」
「うん、ありがとう~!びっくりしちゃった」
「なんであんなところに」
「お星様綺麗に見れるんじゃないかなって思ったの」
パッとこちらに顔を向ける女の子、
途端俺は透き通るような彼女の青い瞳に思わず見入る。
「私、シェルムっていうの」
体中に熱が伝わるのがわかる。
「シェルム・・・」
「あなたは?」
「俺はルーク、ルーク・ロードナイト」
「ルーク!よろしくね!!私すぐ近くにおうちがあるんだ!」
にっこり笑うシェルム。
俺はというとなんだか体が熱いし、心臓が痛いぐらいドキドキする。
彼女の持つ青い瞳に見つめられると、なんだかとても落ち着かない。
「ここにはよく来るのか?」
「うん!本当はいつもママと一緒にくるんだけど今日はママ忙しそうだったから」
「家、送っていってやるよ」
「わーい!ありがとう!!」
パッと俺の手を取るシェルム。
ララとかわらない年であろう女の子。
ぐいぐいと俺の手を引っ張るシェルム。
なんだか変だ・・・
シェルムから目が離せない俺。
このドキドキが実は恋心からくるものだということを、俺は後で知った。
これが、シェルムと俺の初めての出会いだった。
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あれから、俺とシェルムはよく遊ぶようになった。
度々シェルムは木に登っては降りられなくて俺に助けを求めた。
そんなにいいものなのかと俺も気に登りシェルムの横に座る。
「そんなに星が好きなのか?」
「うん!!キラキラして綺麗だもん」
にこにこ笑うシェルムに俺もつられて笑顔になる。
「でもまだ大人じゃないから、夜にお出かけできないでしょ?」
「大人になったら夜お空いっぱいの星見に行くんだ」
「俺も行きたい」
「もちろんルーくんも一緒だよ!指切りね!!」
「うん!」
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俺には同年代の友達はいるが、年下の女の子はララ以外はシェルムが初めてで。
ララは俺と遊ぶ度に表情が険しくなるが、
俺の遊びについてこれるシェルムがすごく新鮮だった。
お転婆で目が離せなくて、くるくる表情が変わって。危なっかしくて。
ララには妹のような気持ちで接してたけど、シェルムはまた妹とは違うと思う。
シェルムの笑った顔は本当に楽しそうで、俺も心から楽しくなる。
シェルムとずっと一緒にいれたらいいなって思ったのは、これぐらいの時からだった。
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シェルムと何度か遊ぶうちに、その中にララも混ざるようになった。
ララはシェルムと同い年の俺の従妹。
おとなしくて表情がわからなくて何考えてるかわからないやつだ。
俺の父とララの父が兄弟のため、たまにララの家族が俺の家に来て親戚の集まりをする。
そういう時決まって子どもは遊んでなさいと一括りにして一緒に遊ばされる。
だが、俺も兄弟がいないしララもいない、近所にはシェルム以外の異性の友達もいないし。
ララに関しては俺がやりたい外の遊びに向いてない。
最初の頃は俺の遊びに付き合ってどこでもついてきたが、
怪我が多すぎるのでその度に俺が父に怒られた。
ララに付き合って女の子の遊びに付き合ったこともあるが俺はつまらなかった。
ララはララで俺の遊びの姿勢が気に入らないらしく、顔を険しくした。
まぁ合わないんだろな、根本から。
そう思う。
ただララと俺はシェルムが一緒にいる時だけ不満なく遊べた。
俺がしたい外の遊びにもシェルムは一生懸命ついてきてくれるし、
ララがしたい遊びにもシェルムは楽しそうに参加していた。
何年かそうして遊んでるうちに俺たちもお年頃というやつになって。
俺も近所の同性の友達と遊ぶようになった。
一人で遊びに来るようになったララとシェルムは遊んでるみたいだが。
シェルムと遊ぶ回数がなんだか減ってしまった。
俺の方が年上で俺の方が自覚が早かった。
異性の友達であるシェルムと遊んでいるのを、
近所の同性の友達に知られるのはなんだか恥ずかしかった。
でも本当はシェルムと会いたかったし遊びたかった。
あの透き通るような青い瞳は、もうしばらく見ていない。
最近魔法の練習を始めた。
父から先祖から代々受け継いでいる懐中時計を譲り受けた。
俺ももうすぐ魔法学園に入学する。
まずは簡単な炎の魔法から、箒を使っての飛行術。
空が自由に飛べたらシェルムとの約束も守れるかな。
実際一緒に夜空を見れるかどうかすらわからない。
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俺が夜な夜な箒の練習をしていることを母から聞いた父はこう告げた。
「おまえには許嫁がいる」
俺は何を言われてるか理解が出来ず父の顔を凝視するばかりだった。
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「許嫁・・・?」
「おまえの結婚相手のことだ」
「意味はわかります!!私に許嫁がいるんですか!?」
「そうだ、いってなかったか?」
コーヒーを飲みながら新聞に目を通す父はあっけらかんと答えた。
「聞いてません!」
「なら今言った!!」
新聞から目を外して俺の方を見てニヤーって笑う父。
「いつから決まってたんですか」
「生まれる前から」
「あなたも性格が悪いわ、あえて言ってなかったんでしょう?」
俺と父がいる父の部屋に母がノックしながら入ってきた。
「んん?そうだったかな?」
母が入ってくるとばつが悪そうにする父。
「生まれる前から決まってたってどういうことですか」
「昔ながらの友人と約束したのだ。」
それぞれ男女の子供が出来たら許嫁にしようと」
「この家も代々絶やすわけにはいかない魔法騎士の家、
先方にもその話をしたら乗り気で聞いてくれてな」
「そんな簡単に・・・!?」
「簡単だけな話ではないぞ!ちゃんとこれまでの様子を見て正式に決めた」
「正式に?」
「おまえがその子を気に入らなければ、許嫁の件は白紙にするつもりだった」
「もともと酒の席での話だったしな」
「母さんから聞いたぞ、最近箒の練習してるそうじゃないか」
箒の練習は夜な夜な一人で秘密で練習していたので、
全部ばれていたことに恥ずかしさを覚える。
「恥じることはないぞ、向上心があるのはいいことだ」
「それにその子のためなんだろう?」
「あなた、まだお相手がどなたか言ってないでしょう?」
「その子とは・・・私も知っている相手ですか?」
父にそう尋ねる。
父はまっすぐ俺の方を見据えるて笑う。
「ああ、よく知ってるだろう。」
「相手はフライハイト家のシェルムさんだ」
名前を聞いた瞬間、頭を鈍器で殴られたかのような衝撃。
シェルムが、俺の許嫁?
「フライハイト家とロードナイト家はもともと家同士も仲が良くてな」
「先方の意志もちゃんと確認しての話だ、また近く正式に顔合わせはする予定だ」
「ルークも驚いたでしょう?内緒にしていてごめんなさいね」
「シェルムちゃんがお嫁さんに来てくれるなら私も反対する理由はないかなって思ったの」
「・・・失礼します!!!」
「あ、ルーク!」
「放っておけ」
俺は父と母がいる部屋から飛び出し、シェルムのところへと走った。
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